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グラナム凱旋門と霊廟
- Les Antiques
場所 : Saint-Rémy-de-Provence

グラナム遺跡の玄関口ともいえる場所には、ある2つのローマ時代の遺物が残っています。凱旋門と霊廟(死者慰霊塔)がそれで、2つを指して「Les Antiques(レ・ザンティック)」と呼びます。高さが8.6mあるグラナムの凱旋門は、残念ながら上部が壊れてしまっており、かつての全体像を見ることは叶いません。おそらく完成当初は、より高く立派なものであったことでしょう。しかし、現在の姿からもその美しい造りは十分に堪能できます。

 

注目すべきはその装飾。まずアーチ部に目を向けてみると、周囲がたくさんの果物やオリーブの小枝、唐草文様にも似た草花で縁取られています。また、アーチをくぐりながら天井を見上げると、ハチの巣を思わせる六角形の文様がびっしり。これらは、ローマ帝国が成しえた平和や文明の成果を表しているといわれます。

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そしてアーチ部の両サイドに施された、2人の囚われたガリア人のレリーフも見逃せません。凱旋門の両面に施され、合計で4対見られるこれらの彫刻は、人物の服装などからガリア人を描いたものと考えられ、杭につながれた姿や両手を後ろで縛られた姿が印象的。個々の人物像の解釈には諸説あるようですが、ローマによるガリア征服を象徴していることは確かです。グラナムの凱旋門はアウグストゥス治世に建てられたといわれますが、正確な建立年は定かではないようです。

凱旋門のすぐそばに建つ霊廟は、現地で「Le Mausolée de Julii(ル・モゾレ・ド・ジュリ)」または「Le Mausolée de Jules(ル・モゾレ・ド・ジュル)」と呼ばれ、紀元前30年から20年頃に完成したとされます。建てたのは、グラナムの貴族であったJulii家(またはJules家)のカイウス(Caius)の息子3人。ガリア人である彼らの祖先は、ガリア戦争に従事し、その功績を認められ、ローマ市民権を得ました(※※)。その栄光を示し、祖先を祀るために霊廟は建てられたと考えられています。霊廟には碑文が刻まれており、そこから判明しました。

ところで、グラナムの霊廟の特徴は、その規模の大きさと構造、保存状態の良さにあります。高さが16mあるこの霊廟は3階建てで、その姿はさながら塔のよう。イタリアなどでも背の高い霊廟は見られますが、ここまでの規模や構造を持つものは珍しいようです。

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まず、4角形の最下部は、各面に浮彫が施され、そこには歴史的な戦や神話の場面が描かれています。墓碑としての役割を果たしていると考えられるこの部分。緻密で美しい彫りに注目です。

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次に中間部。こちらでは4本の柱で支える凱旋門が表現されており、各面に開口部が造られています。門の上部には帯状の浮彫装飾があり、大海が表現されているのです。これは現世との境界を表しているといい、霊廟の最上部へと繋がっていきます。

 

そして最上部に見えるのは、故人のお墓です。列柱を円形に配し、天井には円錐形の屋根をあしらった小さな神殿には、2体の故人の彫像が。こうした形のお墓は古代ギリシャに見られるもので、ここでは天上の世界を表しています。ギリシャの文化を残しているところから、ガリアとローマの「同化」も暗に象徴しているのかもしれませんね。

投稿 : 2021年5月15日
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