全部で8回あったと言われるヨーロッパ中世の有名な「十字軍遠征」(※)。中には、フランスが中心となって軍隊を編成・派遣した回もありました。その際に重要な役割を果たした街が、南仏カマルグ(Camargue)にあります。
それが、「エグ・モルト(Aigues-Mortes)」です!
現在の市街地の辺りは古くからの沼地であり、かつては海岸線が街の近くにありました。そこでは、古代からローマ人によって塩湖での製塩や漁業が盛んに行われ、続いて9世紀にはベネディクト修道会によってカトリックの影響を受けるようになります。その後12世紀頃になると、地中海を往来する多くの船舶がエグ・モルトにやってくるようになり、フランス王国にとってこの地域の重要性が増大。また当時、ラングドック地方が王国の支配圏に入ったものの、国有の港が地中海沿岸に無かった(その他の港は他王国領または伯領だった)ことから、13世紀に入り、時の王ルイ9世はこの地に大きな港の建設を計画しました。それに伴い1246年から1272年にかけてつくられた街がエグ・モルトなのです。1248年と1270年の2回の十字軍は、ここから遠征していくことになりました。以降も様々な歴史を刻みますが、街は運河の堆積作用によって次第に海から遠のき、港は衰退。中世の城塞都市は砂地に浮かぶように、内陸に取り残されていったのでした。
しかしそのおかげで、中心街を囲む象徴的な城壁は、完成後当時の姿を留めたまま、時代を超えて今に受け継がれています。城壁に組み込まれた有名な建造物、コンスタンス塔(La Tour de Constance ラ・トゥール・ド・コンスタンス)などを含め、観光客に人気のスポットです。周囲の景観と共に、アヴィニョンの城壁とはまた違った雰囲気を感じてみてください。
中心街に入ると、きれいに区画された街並が。家々は南仏の太陽で輝き、ルイ9世の像が建つ聖ルイ広場(La place Saint Louis ラ・プラス・サン・ルイ)とその周辺に並ぶ素敵なレストランやお土産屋さんは、大勢の人々で賑わっています。また、13世紀に建てられたノートルダム・デ・サブロン教会(L’église Notre-Dame des Sablons レグリーズ・ド・ノートルダム・デ・サブロン)等、中世以降の教会や礼拝堂の数々も見逃せません。