ロテル・デューは市庁舎の裏手にあり、現在は有名なホテル、インターコンチネンタル・マルセイユとして世界中の宿泊者を迎え入れています。五つ星を得ているトップクラスの宿泊施設であり、館内に備えるレストランもミシュランの星付き。建物の装飾や手入れの行き届いた館内設備、レストランでの一皿…どれをとっても芸術的であり、一流ホテルの風格を感じる素晴らしいものです。
今日ではこのような豪奢なホテルとなっていますが、ロテル・デューという別名がある通り、実はかつてこの施設は別の役割を担っていました。ロテル・デューとは、フランス語でいわゆる「病院」の意。その市街のメインとなる市民病院を指して、こう呼んだのでした。その起源は中世時代に遡り、一般的に教会の近くに建てられ、その司教によって管理されていました。収容者の立場は様々で、傷病者はもちろん高齢者や貧窮者、身寄りのない人にまで及んだといいます。「病院」とは言うものの、かつては慈善施設のような役割を担っていたのです。
マルセイユにおいては1166年、第2回十字軍の後、サン・テスプリ病院が今のインターコンチネンタルの建つ場所に造られたことに始まります。今でも当時のチャペルの名残が中庭に残り、またホテル1階の一部には当時のモザイク調の床が保存されています。そして1593年に他の病院と合併し規模が拡大。現在につながる建物が建設され、マルセイユのメインの病院として、ロテル・デューと呼ばれるようになったのです。
その後、ロテル・デューは拡張や改築、大学医学部の施設としての機能の変化を経て、最終的に2006年に病院としての役目を終えます。今ではかつて病院であったとは想像できないほど洗練された建物となっており、その堂々たる風貌はマルセイユのシンボルのひとつといっても過言ではありません。