《旅好きライターのプロヴァンス暮らし》第9回 〜「アルル」のローマ遺跡とゴッホの軌跡〜

2021年11月06日
タグなし

アルルはエクスにある私の家から車で一時間ほど。
小さいまちなので歩くだけなら一日あれば十分ですが、見所が多く何度も訪れたいこところです。

古代ローマ時代を物語る「円形闘技場」

アルルは紀元前6世紀頃にギリシア人が開拓した後、紀元前1世紀にローマの植民地となりました。アルルは地中海へ続くローヌ川沿いに位置しているため、ローマ人は運河を建設し、アルルを地中海交易の要所としました。

そうしてアルルは「小ローマ」と言われるほど繁栄します。
現在、その形跡であるローマ時代の遺跡がいくつもあり、それらは世界遺産に登録されています。

紀元前90年、アルルがローマの植民地になった初期に造られた円形闘技場です。
剣闘士の戦いや猛獣狩りの舞台で、収容した人数は2万人以上。東京武道館の収容人数よりも多いです。
いまでもお祭りのときなどに、ここで闘牛が行われます。

闘技場にはあらゆる身分の市民が訪れたといいます。この暗い回廊を、これまでどれくらいの人が歩いたのでしょう。

中世になると闘技場は要塞に改造され、なかで人が暮らしていた時期もあったそう。一時期は200以上の家が並び、教会や広場まであったとか。


闘技場はアーチの連なりが2層になったつくりで、アーチの上に登れます。アーチはもともと3層だったそうですが、長い歴史のなかで一番上が失われました

それでも上に上るとかなり高く、まちを一望できます。
赤茶色をした家々の屋根の向こうに、アルル繁栄の要となったローヌ川が見えます。川はカマルグを経て地中海へと続いています。

こういう、生活感があるところについ目がいってしまう。
プロヴァンスの人たちは、テラスを部屋の一部のように使います。居心地よさそう。

いまも音色が響く古代劇場

円形闘技場と並び重要なローマ遺跡「古代劇場」。
造られたのも円形闘技場と同じ紀元前です。しかしこの劇場が使われたのは5世紀初頭まで。以降はアルルの都市づくりのために大理石の柱や彫刻を持っていかれてしまいます。大部分が取り壊され、9世紀には要塞にされたりもしました。
劇場として復元したのは17世紀になってからだそう。

そして現在、驚いたことに古代劇場は現役です。
この日はハープの無料コンサートが開かれていました。会場が持つ時間の厚みに思いを馳せながら聴く音色は、いっそう心に染みます。

ゴッホが描いたアルル

アルルはゴッホが描いたまちとしても有名ですね。
しかしゴッホがアルルにいたのは1888年2月からの15ヶ月間と、実はそれほど長くはありません。
にもかかわらずゴッホはここで約200点もの作品を描いています。

ゴッホはアルルに来た当初、ゴーギャンとともに夢の共同生活をしながら活動しました。
しかし、ゴーギャンはゴッホの不安定な精神状態に耐えかねてアルルを去ります。ゴッホが自らの耳を切り落としたという有名な逸話は、このときの出来事です。

ひとりになったゴッホはますます精神を病んでいき、やがて自身もアルルを去ることに。精神病院に入院するなどした後、1890年7月に銃で自殺しました。


ゴッホの代表作のひとつ『夜のカフェテラス』。
これは、
アルルのフォーラム広場にある「カフェ・ヴァン・ゴッホ」というカフェが被写体です。

ほかにも、アルルには名画が生まれた場所がいくつもあります。

精神を病みながらも、何かに突き動かされるように絵を描いたゴッホ。
アルルの空気は、彼の感性を大いに刺激していたことでしょう。

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