【プロヴァンス・キッチン】【青漣のプロヴァンス美食巡り〜ミシュラン笑撃レポート編】no.2

2022年03月31日
タグなし

こんにちは。南仏エクサン・プロヴァンス在住の青漣です。食べ歩きが大好きで「氣」と「愛」の入ったお料理を求めて放浪しています。

悲喜こもごも2022年ミシュランガイドも発表されましたね。

こちら2回目となりました南仏レストラン突撃?笑撃?レポートにしばしお付き合いください。

今回の訪問先はエクサン・プロヴァンスから車で20分。サンカナという街のミシュラン一つ星レストラン「LE MAS BOTTERO」です。

この街は人口5000人くらい、これという観光名所も無く蚤の市を訪ねても出品されている物がショボ。。もとい生活感溢れている物が多く手ぶらで帰ったこともありました。

私にとってはお地味な土地柄という印象で正直、こんな所に一つ星とは。。と驚きの方が先立ちました。

そしてこんな小さな街までミシュランの調査員が足を運んでいるのだなと感心しました。日本語しか出来ないアルバイト調査員募集していませんか(笑)

シェフのボッテーロさんの経歴を見ますとニースのネグレスコホテルやモナコのLe Louis ⅩⅤなどで腕を振るわれた後、グルノーブルに自分のレストランを出され、満を持して故郷に戻ってこられたようです。こんな華々しい経歴だったらそりゃミシュランも調査員派遣するわね。。と納得です。

周りにほとんど何もない道路の脇に広い駐車場があり、外見は平家の南仏スタイルのシンプルな建物です。中に入ってみましょう。

<Atmosphere=雰囲気>⭐️⭐️⭐️

中に入るとカウンターが上手に配置してありテーブルに着くまでの期待感が上がります。

広いのでテーブルの間隔も超ゆったり。窓も大きく可愛い農園のようなお庭も見えて本当に気持ちが良い空間です。

 

一つ星と言っても南仏のレストランでのファッションはとてもカジュアルです。ほぼ普段着の方々6割、ちょっとおしゃれしている方3割、写真に撮りたいようなオシャレさん1割といったところでしょうか。前回私はちょっと張り切ってハイヒールを履いたのですか、街歩きでヒールが何度も道の石の隙間に入り怖い思いをしたので、街歩きとレストラン探訪をセットに計画される場合はフラットな靴の方が無難かもしれません。

テーブルの上にはキラランとシェフの名を冠したライヨールナイフが鎮座されておりました。とっても可愛くてキュートなサービスの方が「このナイフはテーブルで最初から最後までご一緒します」というような説明を感じ良くしてくださいました。

これだけでも時代劇なら「お主、なかなか出来る奴でござるな」という台詞が出てくる感じです。

話は逸れますが、現在はフランスの特許庁がフォルジュ・ド・ライヨールのみが「LAGUIOLE ORIGINE GARANITE」の刻印を刻めることを許していますが、フランスではいろいろなLaguioleが出回っており、マルシェなどで「えっ!この価格で買えるの?」と微妙な価格の「自称Laguiole」を薦められることがありますのでしっかり確認、納得の上お買い求めされることをおすすめいたします。

メニューの書かれたカルトを開くと最初に生産者と買付け先の一覧が下記の文章とともにずらりと書き出されていました。「良い品物がなければ良い料理はありません。私達の土地に深く愛着を持っています。パートナーがいなければ何も出来ません」

「プロバンス料理」と銘打つレストランで何度もがっかりしてきた私ですがこのリストと言葉にここは多分相当美味しいだろうなという気がしてきました。

ランチメニューは30€、70€、90€のコースがありました。一つ星で30€のコースとはどのような物が出てくるのか、かなり興味をおぼえたので私はこちらのコースを頼み、それぞれに合ったグラスワインを提供して頂けるようにお願いしました。

こちらの30€のコースはシェフができるだけ多くの人にお金をかけずに自分の料理を体験してもらいたいという思いからだそうです。

 

《Amuse-bouche=突き出し(先付け)》⭐️⭐️⭐️

アミューズは二品提供されました。まずは地産地消の直球からです。パニスと地元のハーブを使ったフォカッチャ、オリーブとアンチョビ風味の二種のタプナート、そしてシェフの名前のついたオリーブオイルです。パニスとはひよこ豆ペーストのフライで南仏の名物料理の一つです。いろいろなところで頂きましたがいわゆる「揚げ物」枠の美味しさで、「名物に美味いものなし」だなと思っていましたが、「美味いっ」これが本物のパニスかと感動のひと口でした。

このパニスの作り方をマスターしたら「南仏帰り」として故郷に錦を飾れるなと思う程の完成度でした。

二品目はお洒落なフルフルのアスピックゼリー。静かで滋味あるゼリーの味、細かく刻まれた野菜の美しさ。刻みものがこんなに丁寧なレストランはそうそうお目にかかれません。

これらに合うとおすすめしていただいたワインはこのレストランの目と鼻の先、地元で歴史あるCHATAU DE BEAUPRE のCollection du Château2020でした。ソービニヨンとセミヨン50/50です。色が黄金色で美しく辛口ですがとても香りが複雑でクローブ、炒ったアーモンドの香りを感じました。私の感度の低い嗅覚ですとこのくらいなのですが説明ではその他にバニラ、サンダルウッド、バターの香りもすると言われていました。
「南仏のワインはグイグイいくんだよ!」と言われますが(誰から言われた?自分で言ってるだけ?)こちらはグイグイ飲むのは申し訳ない「味わう」ワインでした。

 

ミネラルウォーターは、私が最近注目しているエクサンプロヴァンスの808でした。この水はサント・ヴィクトワール山の麓、地下808メートルから自噴しているのを瓶に詰められたものです。フランスでは珍しいまさに喉を転がり落ちるようなまろやかな柔らかいお水です。

《Entrée=前菜》⭐️⭐️⭐️

Pâté en Croûte

Canard, Noisette et sarriette

Confit d’oignons doux

私の中で「パテが美味しいお店はお料理も美味しい」というデータがあるので、レストランでパテを頂くのが大好きなのですが、南仏では普通のお肉屋さんや惣菜店で売っているパテのレベルが普通に美味しいです。日本のようにレストランで感動するパテは味わえないのかと諦めかけていたところですが、「これぞレストランでしか食べられないパテ」の登場でした。香りの良いサリエットと呼ばれる香草が使われていてノワゼットとともにアクセントとなっていました。

サリエットはプロヴァンスのような石が多い地質に生え、育つのに水を必要としない香草だそうで今回初めて知りました。パテに絶妙な具合で振られた岩塩と添えられた甘い玉ねぎのコンフィと。至福のひと時でした。

 

こちらにもアミューズと同じワインを勧められましたのでおすすめに従いましたが、できれば赤かロゼの提案が欲しかった。ペラペラとフランス語で話されるとつい「ウィ」と言ってしまう悲しい性。ひとえに自分の語学力を向上させるしかありません。

《Plat=メインディッシュ》⭐️⭐️⭐️

Dos de saumon français d’Isigny

Poché à l’huile d’olive

Vierge printanière

Légumes du moment sautés

春一番の新鮮な野菜のソテーに海産物が美味しいことで有名なノルマンディーのイシニー産のサーモンをオリーブオイルでポシェして提供されました。

「ポシェ」とはなんぞやと思われる方もいらっしゃると思います。私はフランス料理を少しだけ習ったことがあるのですが、フランス料理の加熱方法のブレゼ(braiser)、エテュヴェ(étuver)、ポシェ(pocher)、コンフィ(confit)などのイメージを日本語の単語に訳すのが難しいです。ポシェとは私の習ったイメージですと材料をたっぷりと液体の中に入れ、沸騰しない程の温度でゆっくりと火を通すイメージです。

素材の旨味を逃さずにしっとり仕上げたい場合の料理法です。

 

同席した日本人4名全員がしばし無言になる程、素材、火加減、塩加減、こちらの魚料理は違うコースを頼んだものもどれも秀逸でした。量についてはほとんどの日本人には丁度良いかと思いますが、こちらのドーンという分量に慣れている方には物足りないかもしれません。

これに合わせてお勧めされたのがフランス南西部バスクピレネーのドメーヌStratéusのPACHERENC DU VIC -BILH 2020でした。 64/36の割合でグロマンサンとプティマンサンです。色は少し緑がかっていて味は柑橘系でとても爽やかです。グレープフルーツのような心地よい酸味がサーモンと合いました。

シェフが選んだこのワインはどのようなドメーヌなのでしょうか。

お祖父様から引き継いだ3ヘクタールの葡萄畑を蜂の巣箱や昆虫ホテルなどを置き自然と共生しながらワイン作りに情熱を傾けている若き生産者でした。蜂が住めるような環境で農薬を撒かずに生業として農業をするというのはとても大変な事だと思いますが、このような生産者が数多くいるというのは間違いなくフランスの強みであると思いました。

《Dessert=デザート》⭐️⭐️

Pomme Granny rôtie au four

Rôtie au four au miel de printemps

Crème légère à la cardamone noire,finger de pate

グラニースミスという青リンゴを春の蜂蜜で焼いてブラックカルダモン入りのクリームが合わせてありました。フランスはりんごの種類が本当に多くて買うのに迷いますが、今度自分でも青リンゴで作ってみようと思いました。

甘さ控えめでクリームもさっぱりしていて日本のフレンチのデザートのようでした。

 

《食後の焼き菓子》レモンのホワイトチョコとビターチョコ乗せ

 

70€、90€のコースのデザートが全く別次元でしたので(当たり前ですよね)星は二つですが大満足でした。

 

たっぷり3時間会話とお料理とワインを楽しみました。

お庭を見学させて頂き、隣の敷地にはラベンダーが植え込みされるとのこと。テラスでの食事も気持ち良いと思います。

以上が今回私の頂きましたコースですが、他のコースのメニューとお食事も本当に素晴らしかったので簡単に追記いたします。

本物のプロバンス料理を食されたい皆様、サンカナへGo!でございますわよ。

お付き合い頂きありがとうございました。

また次回 à bientô!

 

*ピサラディエール

2022年私たちのピサラディエール

 

*帆立貝(90€のみ)

殻付

マレモルト産の初アスパラガス

肝をサヴァニャン(白ワイン)でソースにして

 

*地中海のメーグル(白身魚)

柔らかく蒸して

玉ねぎとネギをブレンドしたソースを添えて

 

*ラカンの鳩(世界で最高の鳩と言われている)(90€のみ)

最高のクルミをまとって

旬の野菜を添えて

 

*オートプロバンスの子羊(70€のみ)

セル(腰の部位)のロースト

グレモラータ(パセリ・レモン・ニンニクのソース)をオリエンタル風に

ブレットをミルフィーユにして

 

*ロニュの山羊のチーズ

ブレガロンファームのチーズを2種類

 

*フルーツをエキゾチックに(90€のみ)

マンゴーのパンナコッタ

パイナップルをラム酒でフランベして

パッションフルーツのソルベ

 

*チョコレート

モカ農園(チョコレートのグランクリュ)のカカオとピエモンテのノワゼット

下草の香りのするアイスクリーム

「【プロヴァンス・キッチン】【青漣のプロヴァンス美食巡り〜ミシュラン笑撃レポート編】no.2」に4件のコメントがあります

  1. cherry様 コメントありがとうございました。プロパンスならではの食材を使って美味しく頂けるレストランは貴重ですよね。
    ぜひ機会を作って訪問されてみてください。

  2. 青漣さん、こんにちは!
    楽しい、丁寧なレポートをありがとうございました!!
    シェフの心づかい、思い、こだわりが伝わってきます!
    何と言っても、嬉しいのは地元のものを、さりげなく取り込んで、気取らず、他の素材とバランスを取って創作されたお料理が素晴らしいですね。
    美しくてため息が出ます。この分量だったら、胃も疲れず、ひとつひとつ大事に食べることができそう。シェフの名前入りのライヨールナイフが最初から最後までお供してくれるなんて、何だかほっとするようなおもてなしを感じます。
    まさに、本物のプロヴァンスのレストランですね!

  3. 素晴らしいレポートありがとうございました😊😊
    いろんなソースを味わってみたいと思いました。

    1. 星付きレストランのmenuを読む楽しさが、ようやくわかってきたところです。
      ソースもプロのプライドが感じられますね。
      これだからやめられません。(^^)

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